1ポンドコインに反映された「連合王国」イギリスの成り立ち

第2章や第3章では、ユニオン・ジャックや王家の紋章には英国の成り立ちがよく反映されているということを述べたが、その中で、イギリスの貨幣の図柄にも連合王国としての性質がよく反映されたものがあるということに少しだけ触れた。ここでは、追加情報として、英国の貨幣に見られる「連合王国」としての国の成り立ちが意識されていると思われる図柄について、もう少し詳しく紹介しようと思う(なお、英国の貨幣については、王立造幣局(The Royal Mint)のホームページに詳しい解説がある。以下の内容も、そこに示された情報を参考にしている。なお、発行年などについては、2013年1月末現在の情報)。

 

@王家の紋章を図柄とする1ポンドコイン

王家の紋章を用いた1ポンドコインは以下の(A)〜(C)の3種類が流通している(写真ではコインの大きさが少し違うが、実際は全て同じ大きさ)。

(A)は現在までのところ1983、1993、1998、2003、2008年の5回にわたって発行されており、非常によく見かける。英国を象徴するエリザベス2世の紋章が図柄に用いられている。

(B)は1988年に発行されたのみで、他のものに比べると見かける頻度が低い。王家の紋章の盾の部分の上に王冠が乗った図柄となっている。

(C)は2008年から現在まで発行し続けられているもので、非常によく見かける。連合王国を象徴する、王家の紋章の中の盾の部分が図柄に用いられている。

(A)                    (B)                    (C)

 

A各構成国の象徴を図柄とする1ポンドコイン

英国を構成する4つの「国」を象徴する図柄が描かれた1ポンドコインもある。それぞれの「国」に不公平がないよう、(発行年はそれぞれ別々であるが)必ず一つの「国」に一つずつ、合計4種類で1セットの図柄となっている。

この種のものとしては、各国の紋章あるいは旗の図柄に基づくもの((A)〜(C))と、各国を象徴する植物を図柄にしたもの((E)〜(H))との2種類がある(なお、北アイルランドには正式に認められた紋章や旗がないため、(D)については、紋章・旗の図柄ではなく、独自の図柄となっている)。

これに加え、ここ数年の間に、各国の首都(ロンドン、カーディフ、エジンバラ、ベルファスト)の象徴を図柄としたものも発行されているが、これについてはまだ手元に全部揃っていないのでここでは扱っていない。

 

(A)イングランドを象徴する3頭のライオンを図柄とする1ポンドコイン。1997年、2002年の二度にわたって発行されている。

(B)ウェールズを象徴するドラゴンを図柄とする1ポンドコイン。1995年と2000年に発行されている。

(C)スコットランドを象徴する Scotland Lion を図柄とする1ポンドコイン。1994年と1999年に発行されている。珍しいわけでもないが、常に目にする他の3つに比べるとやや見かけない気がする。

(D)北アイルランドを象徴するCeltic Crossとルリハコベの花を図柄とする1ポンドコイン。1996年と2001年に発行されている。

 

         (A)               (B)                (C)                 (D)

 

 

(E)イングランドを象徴する樫の木と王冠を図柄とする1ポンドコイン。1987年と1992年に発行されている。清教徒革命で父チャールズ1世が処刑された後、息子のチャールズ2世は樫の木に身を隠して追手から逃れたと言われており、そのエピソードと関連し、樫の木はイングランドの粘り強さを象徴するものとされる。1660年にチャールズ2世が王位に就き王政復古がなされたことを記念する5月29日のOak Apple Day (Royal Oak Day)がそのように呼ばれるのもこのエピソードに由来する。

(F)ウェールズを象徴するニラと王冠を図柄とする1ポンドコイン。1985年と1990年に発行されている。ある時、ニラの生えた野原でアングロ・サクソン人との戦争が行われた際に、ウェールズの守護聖人とされる聖デイヴィッド(実在のウェールズ人司教)がウェールズの戦士達に、味方同士を識別できるように兜に植物を付けるよう命じたというエピソードに由来する。ウェールズでは今でも3月1日の聖デイヴィッドの祝日にはニラを身につける習慣があるらしい。

(G)スコットランドを象徴するアザミと王冠を図柄とする1ポンドコイン。1984年と1989年に発行されている。

(H)北アイルランドを象徴する亜麻と王冠を図柄とする1ポンドコイン。1986年と1991年に発行されている。

                 (E)                 (F)                (G)                (H)

 

 

なお、1ポンドコインについては、本ホームページ内に「ちょっと珍しい1ポンドコイン」、「ちょっと珍しい1ポンドコイン (2)」、「ちょっと珍しい1ポンドコイン(3)」という記事もあります。