Doublets (二重語)

Doublets二重語」 とは、同一言語内に見られる同語源異形の単語のペアのことを言う。ペアとなっている単語の組み合わせは、本来語同士、本来語と借用語、借用語同士など様々。以下はその一例。カッコ内にそれぞれの語の出所を示した。

      a/an - one (共に古英語の数詞 an 'one' に由来。a/an はこの数詞の弱形に由来。同様に、of - off, to - too 等も同一語の弱形・強形に由来する二重語)

      camera - chamber (前者はラテン語、後者はフランス語からの借用語で、いずれもラテン語 camera「アーチで覆われた部屋」に由来。このページの左上の写真は、オクスフォード大学の図書館の一部で、Radcliffe Camera と呼ばれる建物。この名称には、cameraの原義が留められている。)

      chief - chef (いずれも借用時期の異なるフランス語借用語。chief がフランス語におけるより古い発音を留めているのに対し、より遅い時代に借用された chef はフランス語に起きた発音の変化を反映し、 chief とは発音・綴りが異なる)

      cycle - wheel  (前者はラテン語あるいはフランス語借用語、後者は英語本来語。いずれもインド・ヨーロッパ祖語 *kwekwlos 「車輪」に由来)

      ditch - dike (前者は英語本来語、後者は古ノルド語からの借用語。いずれもゲルマン祖語の同一語に由来)

      gypsy - Egyptian (前者は後者が訛ったもの。かつてジプシーはエジプト人だと思われていたことから。実際にはインド系であり、ジプシー語(ロマニー語)もインド語派に属する言語)

      reward - regard (前者はノルマンディ訛りのフランス語、後者は標準フランス語からの借用語)

      semi- - hemi- (前者はラテン語、後者はギリシア語から借用)

      vast - waste (前者はラテン語、後者はフランス語借用語で、いずれもラテン語 vastus「空の、荒廃した」に由来)

ここに挙げたものはごく一例にすぎず、探せばこの種の二重語は非常に多く見つかる。

以下の例のように、もう一つ同語源語があり、triplets三重語)となっていることも少なからずある。ここでも例によってカッコ内にそれぞれの出所を示したが、最初の語は@、二番目の語はA、三番目の語はBとしてある。

      cattle - chattel - capital (いずれもフランス語借用語だが、@はノルマンディ訛りに由来)

      estate - state - status (@、Aはフランス語、Bはラテン語からの借用語。いずれもラテン語 status「立っていること、位置、場所」に由来)

      gentle - genteel - gentile (@はフランス語、Bはラテン語からの借用語。Aは@から発達。いずれもラテン語 gentilis「同氏族の」に由来)

      regal - royal - real (@はラテン語あるいはフランス語からの借用語。Aはフランス語借用語。Bはスペイン語あるいはポルトガル語からの借用語。いずれもラテン語 regalis「王の」に由来)

      shrub - sherbet - syrup (@はアラビア語借用語、Aはトルコ語あるいはペルシア語借用語、Bはラテン語あるいはフランス語借用語。いずれもアラビア語で「飲み物」を意味する語に由来。これが直接英語に入ったのみならず、トルコ語かペルシア語、またラテン語かフランス語を経由しても入った)

さらに、それほど多くはないが、四重語五重語六重語となっている場合もある(七重語以上は少し調べた限りでは見つからなかった)。

四重語の例:

   coy - quiet - quit - quite (coy は17世紀にフランス語から借用。quiet はフランス語あるいはラテン語からの借用語。quit と quite とはフランス語の同語に由来する異形同士。いずれもラテン語 quietus 「休息している、静かな」に由来)

   dame - dam - donna - duenna (@はフランス語借用語。Aは@の異形。Bはイタリア語から、Cはスペイン語からの借用語。いずれもラテン語 domina「女主人、婦人」に由来)

   dish - disk - desk - dais (@はゲルマン語時代にラテン語から借用。Aはラテン語あるいはフランス語から借用。Bはラテン語借用語、Cはフランス語借用語。いずれもラテン語 discus 「円盤、円板」に由来)

五重語の例:

   hospital - hostel - hotel - spital - spittle (@〜Bはフランス語借用語。Dはラテン語借用語。CはDのより遅い時代の異形。いずれもラテン語 hospitalis に由来)

六重語の例:

   sir - sire - senior - seignior - senor - signor (@、A、Cはフランス語、Bはラテン語、Dはスペイン語、Eはイタリア語から借用。いずれもラテン語 senior 「より年長の」に由来)

このように、二重語、三重語のみならず、場合によっては四重語、五重語、六重語までもがあるのは、英語が様々な外国語から語彙を多く取り入れてきた結果であり、これらの例は英語の語彙の豊富さの一面をよく反映したものだと言えるだろう。