William Jones と印欧語比較言語学の発達 (p. 39)

39ページでは、印欧語比較言語学の発達のきっかけを作った Sir William Jones (1746-94) のことに少し触れたが、紙面の関係上詳しいことは書けなかったので、ここに追加情報をまとめておく。

ジョーンズは言語習得に関して非凡な才能に恵まれていたようで、若くして既にフランス語、ラテン語、ギリシア語はもちろんのこと、ペルシア語、アラビア語、ヘブライ語をも習得し、中国語の基礎も学んでいたらしい。20代半ばでペルシア語文法の本も出版している。その後も彼は言語を学び続け、生涯で13の言語をマスターし、さらにあと28の言語もそれなりに使えるようになったそうである(余談だが、彼の父もWilliam Jonesという名で、円周率を表す π の記号の使用を考案した数学者として知られている)。

1783年に陪席判事としてインドに赴任すると、彼は、当時まだヨーロッパでは研究されていなかったインドの文化について熱心に研究し始め、1784年にはAsiatic Society という研究会を設立した。彼のインド研究は言語や文学の分野にもおよび、その過程で、彼はインドの古語であるサンスクリット語とラテン語やギリシア語との間には偶然とは言い難い多くの類似点があることに気づいた。

このような発見について、彼は1786年2月2日に行われた Asiatic Society の会合において、 'On the Hindus' というタイトルの講演の中で紹介した。以下は、印欧語比較言語学関連の本などによく引用される、この講演の中の一部。

The Sanscrit language, whatever be its antiquity, is of a wonderful structure; more perfect than the Greek, more copious than the Latin, and more exquisitely refined than either, yet bearing to both of them a stronger affinity, both in the roots of verbs and the forms of grammar, than could examine them all three, without believing them to have sprung from some common source, which perhaps, no longer exists; there is a similar reason, though not quite so forcible, for supposing that both the Gothic and the Celtic, though blended with a very different idiom, had the same origin with the Sanscrit, and the old Persian might be added to the same family. (J. P. Mallory, In Search of Indo-Europeans: Language, Archaeology and Myth (London: Thames and Hudson, 1989), p. 12より引用。下線は筆者が加えたもの。)

「サンスクリット語は、どのぐらい古いものであるにせよ、素晴らしい構造を持っている。ギリシア語よりも完璧で、ラテン語よりも豊かであり、またそのいずれよりも高度に洗練されていて、なおかつ、動詞の語根に関しても文法の形式に関しても、その両方と非常に類似しており、その類似は三者を精査すれば、恐らくもはや存在しない何らかの共通の源から発したと信じざるを得ない程である。これらの場合ほど強力な根拠があるとは言えないが、ゴート語とケルト語も、非常に異なった語法が混ざってはいるものの、サンスクリット語と同じ起源を持ち、古ペルシア語もまたこの語族に属するかもしれないと考えるだけの理由がある。」(拙訳)

この後に発達した印欧語比較言語学の研究により、彼の直観が正しかったことが証明され、引用文中でジョーンズが some common source 「何らかの共通の源」と呼んだ言語が、現在ではインド・ヨーロッパ祖語として知られるようになっている。